株式会社 図書館流通センター (TRC)

株式会社 図書館流通センター (TRC)

文京区大塚三丁目1番1号

電話 03-3943-2221

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茗荷谷駅から春日通りに出て左側前方を見るとすらっとした背の高いチョコレート色のビルが目に入ります。

「株式会社 図書館流通センター」の本社ビルです。2013年に完成しました。  (写真:ビル全体)

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ここは以前「同潤会大塚女子アパート」が建っていた場所です。残したいと惜しむ声もありましたが、2003年に取り壊されました。 新しいビルの「カイザースラウテルン広場」側には「同潤会大塚女子アパート跡地」の碑が設置されています。ビルの壁面に茶色のレンガが採用されているのは「大塚女子アパートへのオマージュ」だと言うことでした。大塚女子アパートの記憶がしっかりと残されています。素晴らしいことですね。(写真:昔の女子アパート、記念碑など)

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左から湯立坂側にあった玄関、春日通り側閉鎖された店舗、日本初のフィットネスクラブ入口(3枚の写真は市川誠氏に提供していただきました。)

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ビルの玄関から中を覗くと背の高い書棚と閲覧テーブルが見えるので図書館かと間違えるかたも多いのではないでしょうか。この一階は、図書館運営のための実演用ショールームなのです。 ちなみに玄関脇のポストは「文京区立図書館」から借りた本の「返却ポスト」です。 ちょうど返却にいらしたかたも「駅前で本当に便利で助かります」。

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確かに。これは良いですね。

 

「図書館流通センター」の創業は1979年(昭和54年)。37年前のことです。大手取次店や出版社など19社が出資して設立された会社です。現在は大日本印刷グループのひとつで、丸善書店、ジュンク堂などなじみの書店も兄弟会社です。

母体となったのは現石井社長が文京区で始めた学校図書館向けの図書販売サービス。創業者の奥様は石井社長とともに働く中で、茗荷谷駅前の女子アパートを見上げては、「いつか駅前に自社ビルを建てられるようになりたいな。」と思っていたそうです。長年のご夫婦の夢が叶ったわけです。

「図書館流通センター(以下TRC)」の仕事は大きく3つ。

ひとつめが全国の図書館へ出版物の販売と出荷。

これまでに納めた本は800万冊以上。埼玉県新座市に200万冊以上をストックする物流拠点があります。

ただ注文を受けて出荷するだけではありません。図書館に収蔵されている本をみると表紙のフィルムコーティング、色々と数字が並んだ図書館用分類(日本十進分類法など)のためのラベル、バーコードラベル、なかにはICタグなどもついていることもあります。これら全てを一冊一冊、しかも個別の図書館仕様に合わせて装着してから出荷します。たいへんな手間ですが、受け取る図書館は助かりますね。おかげで、新刊本が到着した当日からそのまま貸し出しもできることになるようです。

二つ目が、全国約400を超える図書館へのコンサルティングをはじめとする運営管理・委託関連業務。 公共図書館業務のアウトソーシング・サービスですね。20年ほど前にTRCが福岡市総合図書館にサービス提供をはじめたのが国内初だそうです。 最近「TSUTAYA」の「図書館の民間委託」が問題となりましたが、「図書館」に対する考え方がだいぶ違う気がしますね。

三つ目が、図書情報データベースの提供。TRCの図書データベースはTRC MARCと呼ばれています。MARCはMAchine Readable Catalogueのこと。すでに340万冊以上の本のデータがあるそうですが、現在でも年間10万冊以上の新しい情報が追加されています。全国約3200の図書館の8割以上がTRCのデータベースを利用しているそうです。これはすごいことです。

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本社ビルの2階と3階の「データ部」で新刊本データ作成作業が行われています。2階が書籍、3階が雑誌やDVD、CDなどのオーディオ・ビジュアル関係など。本一冊当たり、最大で1332もの項目についてのデータが決められて入力されていると聞くとびっくりします。 これだけの項目が個別の本に付与されることによって340万冊(2014年4月時点)の中から適切な書籍が様々に検索できるようになるそうです。「本文以外すべて」ではないかと思うほど1冊の本の様々な角度からの情報が取り込まれ、データとして作成されていきます。それもただ機械的に入力するのではなく、書籍の内容から適切なキーワードを選び、内容紹介の文章作成(105文字以内)のために目次や本文も読まなければなりません。この本の利用対象者(例えば、幼児、小学校低学年向けなど)もここで決められていきます。このグループの皆さんは一人1時間で10冊程度をこなすとか。発売前の見本が毎日平均270冊(新刊本が沢山出版される3月4月には一日に400冊以上)届きます。表紙の写真撮影から一連の作業が始まります。 間違いは許されません。一度入力されたデータは10回以上チェックされるそうです。

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本が到着するとすべて表紙を撮影、写真を調整。一冊しかない見本を手分けして入力のため、必要な箇所をコピー(コピーをする箇所を選ぶのもノウハウが必要です。)

 

室内では100名ほどの皆さんがそれぞれの机に本を積み上げて静かに仕事に集中、緊張感あふれる仕事場です。(写真)たまには、肩もみ、ストレッチも必要ではないかと余計なことを考えてしまいました。

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静かな中にも緊張感あふれる「データ部」オフィス。無造作にどさっと積み重ねても、本の基本情報は一瞬で読み取られ誰がどの本を入力しているのかが瞬時にわかるのです。

 

 

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インプットのため借りた「見本」返却まで残された日数が減ると優先度が上がり、最優先が「赤」が挟まれます。

私の本(一冊だけですが)も入ってました!(感謝です)

この作業のおかげで新刊の発売日にはその情報がTRC MARCで検索できるのです。現在アマゾンで表示される図書情報などは遠く足元にも及ばないことです。

こうした作業の結果の一部を「新刊全点案内」という分厚いカタログ週刊誌(「全点と言えるのがすごい!)にまとめ、全国の図書館関係者へ毎週送付しています。各図書館での新刊本の購入選択を手助けするための推薦本もリストされています。この推薦は外部の識者約40名による「選書者」によって選ばれるようですが、これもたいへんな仕事ですね。

ちょうど見せていただいたのが1月12日発行の「1946号」。37年間続いているのですね。確かに創業の年まで遡る数字です。(

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館内の2階にはテラスと木製のベンチが備えられ、陽気の良い時にはさぞかし気持ちが良いでことでしょう。カイザースラウテルン広場側のテラスは季節になれば絶好の桜見物の場所です。

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最上階(12階)からの眺め

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12階で執務中の谷一文子会長

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地階、会議室前のスペースは若いアーティストを支援する石井社長のアートコレクションギャラリーにもなっています。

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ここはぜひたまに公開していただくと茗荷谷界隈人気のスポットになりますね。

石井さんは藤田嗣治の絵画や東洋陶磁器のコレクション約200点を筑波大学に寄贈しています。

一階のショールームでは、図書館業務を助ける様々な効率化機器が展示されています。個別の本に装着されたICタグ、タグを読み取ってどの棚に該当書籍が収蔵されているか一目でわかる書棚、利用者が選んだ書籍を読み取りテーブルの上に置いただけで完了する貸出業務、この一連の流れが完成すれば確かに人手は必要なくなりそうです。ただ、私の子供の頃、本を持って貸出窓口に行くと、「たくさん読むねぇ。えらいね。」などと声をかけてくれたお姉さんには随分と励まされていたと思っていますので、これからはどうなるのかなぁと若干気がかりではあります。

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左から借りたい本を何冊でもテーブルに置くと自動的に読み取られてそのまま持って帰れるのです。返却も自動。借りた本は30秒ほどで埃を落とし、殺菌消臭!

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「図書館は人類がこれまで創造した知識や情報を収集し、組織化して保存することによって次世代の知的生産活動に貢献する社会的な機能そのもの」(トップのメッセージ)で、それを支援する企業がTRC。石井社長のメッセージは明快です。(2016, 01, 22掲載)

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