作業はデザイン室から始まります。
まずデザイナーが、塑型用のパテや粘土を使い、モデルのもとになる塑像を制作します。その塑像をもとに「ブラインド・モールド」と呼ばれるふたつに分かれた凹型をおこし、乾燥させ、石膏を流し込み原型モデルをつくります。細かいところはまだ出来上がっていません。原型をもう一度デザイン室に戻し、ディティールを仕上げてゆくのです。

この段階で、フォルムと素材の相性など、技術的な問題点がチェックされます。
磁器は焼きあがると縮むのでその点も考慮せねばなりません。最後にモデルを長持ちさせるためシェラックを塗り、表面を堅く保護します。形が複雑な場合、幾つかのパーツに分けることがあります。作品によっては数十ものパーツに分かれることがあります。その場合、鋳型もパーツごとにつくります。実際に焼き上げてみて、デザイナーのOKがでた時点で、「マザー・モールド」(母型)をつくります。
「マザー・モールド」は、パーツごとに分かれた凹型の鋳型で、製造工程で実際に使われる凹型の鋳型は、「マザー・モールド」を使っておこした凸型の原型を使って製作されます。

 準備段階が終わり、鋳込み工房に鋳型がまわされ、いよいよ磁器製造に入ります。鋳込みには、カオリン(磁土)、石英、長石を混ぜた原料に、硬度と滑らかさを与える材料を加え、水で溶かして鋳型に流し込みます。ちょうどねっとりしたクリーム状の半液体です。鋳型に素地を流し込み、数分放置してから、余分な素地を流し出し薄い生地だけを鋳型の側面に残します。30分ほどそのまま乾かし、鋳型から取り出します。パーツに分けた作品は、そこで同じ粘土を溶かした液を塗り各部をつなぎ合わせます。それから仕上げにまわし、水で濡らした筆で各部をそっとなで、丁寧な仕上げを行います。バリを取り除き型の継ぎ目をならし、瑕を補正するのです。仕上げが終わった素地は、10〜12時間かけて乾かします。
乾燥が終わりもう一度チェックし、特殊なオイルを用いてパーツの継ぎ目を点検します。

 最終チェックが完了し、いよいよ窯入れです。まず980℃でおよそ10時間焼き、徐冷窯で10時間ほどかけて、30℃〜40℃に温度が下がるまでゆっくりと冷やしてゆきます。こうして素焼きの状態の小像が焼き上がります。数回磨きをかけてから、ガラス質の釉薬に潜らせて上薬をかけ、再び5時間乾燥して窯に入れます。今度は1410℃の高温で約10時間焼き、同じ時間をかけて徐々に冷やしてゆきます。窯焼きの後、必ず同じ長さの時間をかけて冷やすのは、素地が縮むときの歪みで器体が割れるのを防ぐためです。

 焼き上がったフィギュリンは、絵付け工房に運ばれ、それぞれのデザインに沿った絵付けが手描きで施されます。絵の具が乾くのを待ち、700℃〜800℃(絵の具の種類により)の窯で4時間ほどかけ焼き付けを行います。再び4時間かけて冷まし完成です。