チメルフの動物たち、その魅力

初めてチメルフのフィギュリン(磁器小像)を目にしたとき、そのしなやかなフォルムに驚かされた。動物をモチーフにしたものが多いが、それぞれが動物の瞬間の動きを感じさせる。デフォルメされながら形や動きの特長を捉え、極端に単純化したフォルムが面白いところである。

フィギュリンを磁器の彫刻という人もいるが、彫刻として形が削りだされたというよりも、動物たちが時空を通過してヒョイと滑り出て来たような滑らかさがなんとも魅力的である。オリジナルの多くが1950-60年代にデザインされたとのことであるが、当時は機能性をデザインする風潮が勢いのあった時代だったと思う。そうした中でこれらの作品がポーランドで作られていたことにヨーロッパ文化の懐の深さを感じる。

上絵付けされたシンボリックな彩色はデザイナーの感性を前面に押し出し、動物に対する直感的な印象を巧みに表現している。特に、カオリンの純白の色合いに呼応する上絵具の色彩コントラストが刺激的で、黒の上絵具を巧みに使うことで、磁器の持つ土色の白さがより際立っている。この感覚はちょうど、16世紀に古田織部が黒織部といわれる作品群で行った、黒い鉄釉と白い土色の対比を思い起こさせる。

私の机の上には白熊(カタログ#064)が置いてある。スッと立ち上がったその白熊は優雅でさえある。白熊の特徴である、頭骨の小ささが強調され、小さな耳もまるで一本の線のように表現されている。その造形のパーツ・パーツを見るとけして現実感があるわけではないが、不思議と「白熊が一瞬そんな姿勢をして目の前に現れることもありそうだ」と思わせる形であり、「そんな白熊が存在していて欲しい」と思う姿であるところがチメルフ・フィギュリンの完成度の高さだと思う。

内池正名 会社社長 (東京都)2006年6月10日