命名式
新作品が誕生する度に、伝統に則って磁器製作所ASのオーナー、アダム・スパワ氏によって命名簿に記帳されます。
この伝統は19世紀に遡って代々チメルフ、特に磁器製作所ASの前身であるシヴィッツ磁器製作所の職長、管理者によって引き継がれてきたものです。
伝統に従って、先ず上級管理者、鋳造製造室のベテラン職長、デザイン室長、工場のオーナーが、新作品に対する「ゴッドファーザー(名付け親)」を選びます。デザインが完成すると石膏原型をつくり、そこから最初の「マザー・モールド(母型)」をおこすために石膏原型を鋳型製造室に送ります。
次にこのマザー・モールドをデザイン室にもう一度戻し、新しいタイトルを彫り込みます。
このときデザイナーは、名前の最後の一文字を彫り込まずに置きます。たとえば「the relaxing cat」の場合、最後の「t」を書きません。
命名式のときに、ゴッド・ファーザーの面前で、この最後の「t」を彫り込むためです。
この定めは新しい像と命名式に権威と真正さを与える重要なプロセスとなります。 この時点でデザイナーはゴッドファーザーの名前を既に知っています。
式次第
この命名式は工場オーナー、鋳型製造室長、上級工場管理者、アーティスト、招待客、そして、もちろんゴッドファーザーの臨席を得て工場の原型製作工房で執り行われます。
マザー・モールドに最後の一文字を刻んだ後、ゴッドファーザーは作品を手に取り、あるいはその側に立ち、命名簿に添えるための記念写真の撮影をおこないます。
チメルフの伝統では、工場所属の書記が命名簿に命名式の日付、ゴッドファーザーの名前、作品の名前を書き込み、式の立会人である職長、工場管理者の署名を集めます。
ゴッドファーザーは招待客にシャンパンを勧めますが、この時伝統的にシャンパンには強い酒が加えられます。 ゴッドファーザーの特典は作品の第一号を手渡されることです。
ただし、過去の記録によれば、これらの詳細な式次第と段取りには時として例外が設けられているようです。 例えば、ゴッドファーザーはシャンパンではなく、スピリット(アルコール度数の強い蒸留酒)を勧めることもありましたし、10歳以下の子供をゴッドファーザーには選ぶことはできないという決まりにも関わらず選ばれたりもしていたようです。 若者や少年がゴッドファーザーに選ばれたときは成人の保護者も一緒に選ばなければなりません。定めによれば、少年も成人の保護者も善良でなければなりません。また、少年の出席する場所で強い酒を飲むことは禁止されていますから、ノン・アルコールのシャンパンが用いられます。伝統に則った様々な事柄は後見人が引き受けることになります。
選ばれる若者は評判が良いことに加え、学校、クラス担任の推薦が必要です。
命名式は最後に手書きの署名で締めくくられます。